「4番打者は最も強打者」「1番は足が速く出塁率が高い選手」——日本の野球ではこのような打順論が長年続いてきた。しかしセイバーメトリクスは、この「常識」に対して別の結論を出している。
打順の基本的な役割
| 打順 | 伝統的な役割 |
|---|---|
| 1番 | リードオフ。出塁率高く足が速い選手 |
| 2番 | バントなど繋ぎ役。犠牲精神が求められる |
| 3番 | 高打率の巧打者。チャンスに強い |
| 4番 | クリーンナップ。最強の長打者 |
| 5番 | 4番の後を打つ長打者 |
| 6〜7番 | 準レギュラー級 |
| 8〜9番 | 投手(NPB)または最弱打者 |
この伝統的打順論は「試合序盤に出塁してランナーをため、4番が本塁打で一掃する」というビジョンに基づいている。
セイバーメトリクスが示す「2番最強打者論」
データ分析が示した意外な結論がある。最もOPSの高い打者を2番に置くのが、得点期待値的に最適というものだ。
理由は「打席数の多さ」にある。
9回1〜9番を繰り返した場合、先頭の1番打者は最も多く打席に立つ。2番打者はそれに次ぐ。長いシーズンでは2番打者は1番打者と打席数がほぼ同じになり、9番打者より30〜40打席多くなる。
優秀な打者を多く打席に立たせることが得点を最大化する——それがデータの結論だ。
MLBの変化
2010年代以降、MLBでは「2番最強打者」が標準化している。
- マイク・トラウト(エンゼルス):長年2番を打ち続けた時期があった
- 大谷翔平(ドジャース):2番を定位置とするシーズンが続く
- ムーキー・ベッツ:OPS .900超えの実力者が2番に置かれる
「伝統的4番」は間違いか?
「最強打者を4番に」という考え方が完全に間違いかというとそうではない。
ランナーが出た状態で最強打者に打席が回る確率が高い打順、という観点では4番に説得力がある。また「チームの精神的な柱として4番に本塁打打者を置く」という心理的側面は数字に表れにくい。
重要なのは「打順に絶対の正解はないが、データで最適解を考える姿勢が成績向上につながる」ことだ。
NPBでの打順の変化
NPBでも2020年代以降、データ重視の球団を中心に「2番強打者」や「1番OBP重視」の配置が増えている。坂本勇人(巨人)が長期間1番を打ち続けたり、近藤健介(ソフトバンク)が出塁率重視の観点から上位に固定されたりする例がその表れだ。
打順論は「伝統 vs データ」の最もわかりやすい対立軸の一つ。試合を見ながら「なぜこの打順なのか」を考える習慣をつけると、観戦の楽しさが一段と深まる。